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WAON RECORDS



録音セッション・記録録音・自費出版制作・CD-Rデュプリケートなどのお手伝い

良い音で記録録音残してみませんか? 遠方の演奏会にも参ります。

せっかく時間をかけて準備した演奏会、ワオンレコードの高音質録音で残してみませんか。遠方でもうかがいます。コンサートホールだけでなく、教会、学校、ご自宅などにもうかがいます。完成した音源を基にCDを作ったり、CD-Rでの少量製作でも高品質。すぐにCD化の予定がなくても、後日利用したいときには高音質だからこそ使いまわしが効きます。
CD-Rはこだわりのコピーロボット(メーカー製を弊社独自に改造したもの)を使って高音質に製造。少量製作でも社内のオンデマンド印刷で盤面もジャケットも美しく仕上げます。キャラメル包装も可能。お見積は無料です。お気軽にご相談ください。できるだけ具体的に内容をお伝えいただくのがポイントです。
・出張録音:¥45,000〜 [料金表]  ・録音セッション:¥60,000/日〜


自費出版録音のお手伝いこそが得意とするところです。

ワオンレコードはもともと、自費出版CD制作や、他社レーベルさんの代行録音が本来業務。だからここが得意とするところ。あなたもCD作ってみませんか? 自費出版CDにはサブレーベルアルケミスタ Alquimistaレーベルを付けることができます。また販売会社を通じて一般流通にも乗せられます(CD-R製造品は除く)。Amazon, HMVほか一般販売店から全国展開可能です。制作費がお安くないものだからこそ、多くの方に喜んで聞いていただけるものをご提供したいと思っています。ご希望、ご都合にできるだけ寄り添えるように考えさせていただきます。ご相談・お見積は無料です。まずはお問い合わせください。
※アルケミスタレーベルでリリースするか、レーベルなしにするか、もしくはご自分のレーベルにするかは選択いただけます。
※一般流通販売ルートに乗せるか乗せないかも選択いただけます。(弊社または販売会社の判断によって一般流通に乗せることをお断りする場合があります。)
・セッション録音でのCD制作:60万円前後〜


よそで録った録音だってCDにしてしまいますよ。

ホール音響さんが録ってくださった演奏会のライブ音源、ほかのエンジニアさんが録った録音などから編集・整音してCDを作ることもお引き受けできます。すでにお手持ちの音源をCD-Rでデュプリケートもできます(著作権上問題ない場合に限ります)。ご相談・ご注文をお待ちしております。

ワオンレコードの録音コンセプト

音を録るのではない。アーティストによって音が奏でられる
その空間を、丸ごと録る。それが音楽を録るということだ。

というのががワオンレコードの録音コンセプト。音楽録音には生の演奏を聴くよりももっとクリアに細かいところまで聞き取りたいという欲求があります。そのためにマイクを楽器の近くに立てたり、セクションごとに立てたり、場合によっては一つの楽器に何本も立てたりして、そうして録った音を仮想的な空間の中に配置するようにミキシングする〈マルチマイク録音〉が今は主流の手法と言えるかもしれません。この手法は確かに楽器個々の音はとてもクリアで、互いの楽器の音像が被り合わないように配置もでき、人工的な残響を加えて空気感を演出すれば生では聴くことのできない美しいアンサンブルを作り出すこともでき、また様々な再生環境に合わせ込んだ音質調整も可能です。これはこれで立派な録音芸術になり得ます。
しかし一方で、楽器の発音部分に近いところの音が本当に楽器の音なのかという疑問があります。パイプオルガンやグランドピアノのような大きな楽器の音であろうと撥弦楽器の小さな音であろうと、楽器から発せられた音が空間の中で反射・拡散して様々な響きを伴い、またその過程で特定の倍音が強め合ったり弱めあったりして独自の音色を持って耳に届くのが本来の楽器の音ではないかという考えです。また演奏者に注目すれば、演奏者はその演奏空間の広さや響きの深さに応じてテンポや間(ま)を調整して演奏しているはずで、切り取ってミキシングした人工的空間がはたして演奏者の意図した空間と一致しているのでしょうか。
ワオンレコードでは、演奏者が演奏の場で意図した音楽をできるだけそのままリスナーにお届けしたく、コンサートホールの最上のポジションで聞いているかのような空間の響きが、リスナーの再生システムで自然に再現されるように録る、ということに注力しています。そのために用いているのが、人間の耳の数と同じ2本のマイクだけで録るという手法、ペアマイク録音です。人間が2つの耳だけで音の聞こえてくる方向が左右だけでなく上下前後が判定できるように、2本のマイクでも充分な音場表現ができます。いやむしろ、2本でなければ再現できない自然な音場表現があるのです。その自然な音場の中で、楽器が本来の音色で奏でられ、音楽が甦ってくるのです。歪みのない音場を録るために、コインシデント[Coincident](ワンポイントともいい、2本のマイクがほぼ同じ位置にある)ではなく、ニア・コインシデント[Near coincident](2本のマイクが少し離れた位置にある)録音法を採用しています。よく調整され、正しくセッティングされた再生系(一対のスピーカーとリスナーがそれぞれ正三角形の頂点にあるようなセッティングを想定)で聴いていただくと、収録した場そのものが眼前に広がります。それは演奏家が意図した場の相似形であり、本来の音楽の場と言えるものです。 もちろんマイク2本だけではどうしても捉えることが難しい響きの空間もあります。その時はさらにマイクを追加しますが、その時でも、できるだけ音場が不自然にならないように様々な技術的配慮をもってセッティングします。
ワオンレコードの録音は平均音量が小さいとか、残響が多いとか言われることがあります。それは生の演奏そのままの自然な音場を追求する中で、録った音に何も加えない、何も取り去らないようにするために、電気的に音圧や音質を調整することを一切せず、録る時その場で全ての響きが最善に収まるようマイクセッティングだけで調整している結果です。小さな音は小さく、大きな音は大きいままに録ってあるので、平均音量は小さくても最大音量は目一杯入っています。そのため再生環境によっては不適切な再生音になってしまう場合も確かにあります。だからと言ってあれもこれもに合わせこむことをせず、ただ真実に近い録音を求めたいという想いなのです。
ペアマイクではもちろん、それに追加のマイクを加える時であっても、録る対象が楽器でなく空間である以上、必然的にマイクと楽器の間の距離はマルチマイク録音に比べて何倍も長くなります。この手法でクリアに録るにはより敏感なマイクや録音機材が必要です。そこで、振動板を手張りするなどほぼ手作業で作られたMBHOのマイクや、PureT Recordsと共に開発した素晴らしく集音能力の高い改良型金田式DCアンプマイクや電流伝送マイクシステムを導入したり、現場のノウハウを基に電源周りを自作したり、自然な音場でありながらもよりクリアな音源をお届けできるよう、機材面でも独自の努力をしています。
このようなポリシーをもって録られた数々のアルバムによって、ワオンレコードは高音質レーベルとしての高い評価を得ています。 ただ、良いアルバムは良い録音だけで成り立つものではありません。優れた録音芸術としてのアルバムを得るには、それを作り上げるための別のこだわりも必要です。

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録音は、録っているその瞬間から古いものになる宿命を負っています。録音セッションをして1ヶ月後に編集結果を聞いていただくと、「今はもっと上手に弾ける」と言われますし、半年たってCDをリリースするころには、「もう今はこんな弾き方してない」と言われます。しかしながらそれで良いのです。録音芸術は芸術作品であるという側面と、そのアーティストの、ある時点での制作活動のアーカイブとしての側面も持っています。すなわち、そのアーティストによる演奏記録だけでなく、録った時点での為人、アイデア、技巧などいくつかの要素を詰め込んだ成果物なのです。そういった側面がある以上、録っているその瞬間、制作物を仕上げていく過程、それぞれその時点での、そのアーティストの可能な限り100%近くを、あるいはそのアーティスト自身が意識しないような面を含めたより多くのものを引き出し、取り込むことが、録音し、録音芸術を仕立てる者に課された責任と義務であると感じています。そこで、制作に当たり、まず企画の段階から、そのアーティストをより良く表しアーカイブできる内容についてよく相談し、ご提案し、場合によっては共演者やブレーンのご紹介、必要とあらばトレーナのご紹介などもします。練習やリハーサルにも参加させていただき、より特徴が出るような方向へ演奏のご提案をさせていただいたり、録音当日でも、企画内容に適した響きになるような収録場所の配置であったり、楽曲をよりよく響かせるような調律であったり、充実した演奏を収められるような収録順であったりなど、より良い収録ができるようなご提案をしたりします。収録後の編集は、原則として演奏者にテイクを選んで頂くことはせず、できるだけ演奏者の特徴を際立たせるように第三者的視点から慎重にテイクを選び組み立てていきます。同様な観点から曲順のご提案もします。曲間の長さすら何度も検討して調整します。パッケージの制作でも、解説執筆のご相談に乗ったり、あるいは解説執筆者をご紹介したり、その内容に適した翻訳家を手配したり、パッケージのデザインもその内包物を際立たせるようなものを検討したりと、音を録るということだけでなく、録音芸術を仕立てるためにあらゆる手を講じるのです。このようにワオンレコードのアルバムは、多くの人の手と、知恵と、リソースを費やして制作されています。だから少し時間がかかります。1年にそういくつも作れません。ぜひ気長にお付き合いいただけましたら幸いです。

ワオンレコードのオリジナル録音機材 (電流伝送マイクを除きすべて一品物の非売品です)

音質へのこだわりから、音の入口であるマイクロホンと、録った音の検証のためのモニタースピーカー、そしてこれらを支える電源のコンディショナーに独自の機器を使っています。ご紹介しましょう。


電流伝送マイクシステム

PureT Recordsと共同開発しました。音楽信号を電圧ではなく電流として伝送することで、途中の接点や電線の質の影響を受けにくく、振動板が拾った音をそのままレコーダーへと送ります。また、とてもノイズが少ない設計で、広いダイナミックレンジを持ちます。大編成演奏の収録、ダイナミックレンジの広い音源の収録、ごく小さい音の収録に適していて、ダイレクトで鮮明な音質で録音することができます。

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設計・製作:毛利忠晴(PureT Records)2015年作、2016年、2017年、2018年に改造。
改良型金田式DCアンプマイクの最初のバージョンが納品されるときに、以前よりずっと構想を抱いていた電流伝送で音声をバランス伝送できるマイクができないかという考えを設計・製作者の毛利忠晴さんにお伝えしたところ、幸いその頃すでにバランス電流伝送マイクの回路シミュレーションなどをされていたようですぐに開発にかかることになりました。電流伝送は負荷に電圧は殆どかからず、電流の変化だけで信号を伝える方式です。電流源のインピーダンスは非常に大きいので、外からノイズ(電圧変化)が入ってきても伝送路内ですぐに熱に変わり消えてしまいます。また電気接点などで異種金属の接触部があっても、電圧が殆ど変化しないので非直線性の影響を受けないために歪の発生が少なく、接触抵抗が少々あっても電流源からはどんどん電流が来るので影響は無視できます。またマイクケーブルにほとんど電圧が加わらないと、ケーブルの物理的形状が電磁気力で変化せず、ケーブル固有の音がしない、つまりケーブルの種類による音質変化が少ないのです。これらの特徴によって、電流伝送方式では例えば音楽ホールにおいて三点吊り装置以降の多くの接点や、質が良いとは限らない長い電線路など、通る伝送路の質の影響をほとんど受けずに、高い信号対雑音比(S/N比)で音声信号を伝送できます。つまり、マイクの振動板が拾った音を質を損なうことなく伝送するポテンシャルが高いということです。作っていただいた実機もその特徴を存分に発揮して、振動板と録音機が直結しているかのようなスピード感とエネルギー感を持った質の高い音がし、振幅が大きくなる低音楽器や大編成演奏に使っても音が曖昧にならずダイナミックに表現します。マイクカプセルは改良型金田式DCアンプマイク同様ショップス(Schoeps)社の物を付け替えて使用できるようになっています。成極電圧発生用の低雑音高安定DC-DCコンバータは2015年に改良型金田式DCアンプマイクに搭載したのと同じものです。 巧妙な設計により電源は一般的な48Vのファンタム電源単一で動作し、通常のバランス・マイク/ラインケーブルで信号が送れ、一般的な音響機器の入力に抵抗を1本かませて電圧変換するだけで普通のマイクと混在使用もできる高い互換性を有しています。そのような使い方のためにアダプターも作ってあります。とは言え電流伝送の本来の旨味を利用するには低い入力インピーダンスで受けてやる必要があるので、電源と高音質のアッテネータを備えた専用の電流ー電圧変換(トランスインピーダンス)プリアンプも作ってもらいました。非常に高い信号対雑音比(S/N比)と透明な音質を有しています。2018年の改造では、マイクカプセルとアンプ初段間の接続方法を変更し、カップリングコンデンサを排除して直結としました。またマイク本体内部の電源フィルターコンデンサをマイカからフィルム(Dynamicap Bare Hot Rod)に変更しました。より一層音質と音場再現が向上しました。A-Bステレオだけでなく、デッカツリーやスクエアー、あるいはスポットマイクとしてなど様々なマイクアレンジに対応するよう、マイクは4本、プリアンプも4入出力対応となっています。改良型金田式DCアンプマイクとは音質傾向が異なり使い勝手も異なるので、録る対象に応じてうまく補完しあって使っていけそうです。なおこの電流伝送マイクシステムは、毛利忠晴さんが主宰するPureT Records(ピュアートレコーズ)から一般市販されます(受注生産)。


DCアンプマイクシステム(改良型金田式)

PureT Recordsでカスタムメイドしてもらったものです。オリジナルの金田式DCアンプマイクを基に、さらにプロフェッショナルなペアマイク録音に対応できるように様々な改良を加えました。非常に解像度が高く、透明感の高い音場を形成します。ソロ、小編成演奏、複雑な倍音構成の音源の収録に適しています。

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設計・製作:毛利忠晴(PureT Records)2013年作、2015年、2017年、2018年に改造。
カスタムメイドのステレオマイクシステムです。マイクの出口ですでにラインレベルを超えるほどの電圧が出力されていますので、大抵はマイクプリアンプは必要ありません。むしろ音の大きな音源に対しては減衰器が必要なほどです。このマイクの心臓部は金田式DCアンプを基にした回路で、直流から数MHzに至る広帯域と、優れた信号対雑音比、低歪み、低混変調を特徴とします。群遅延特性も優れているので、録った音が美しいだけでなく、雑音なく静かで、音場もとても正確に再現されます。金田明彦氏が開発されたオリジナルの金田式DCアンプマイクは、音質は優れているもののプロフェッショナルなレコーディングには不向きないくつかの問題を有していて、その対策をしました。オリジナルの金田式DCアンプマイクは左右一体のボディーに単一指向性のマイクカプセル2個がXY方式で取り付けられています(新たに発表された電流伝送型の金田式マイクシステムは本機と同じくマイクが離れた構成になっています)。XY方式はその原理上音場再現がリニアでなく、ちょうど魚眼レンズで撮った写真のような音場になります。ある特定の条件においては中央部分の解像度が高く見通しの良い音場になりますが、実際にはやや不自然です。また単一指向性のマイクカプセルはやはり原理上、離れた音源に対しては低音がややロスし軽い音になります。さらにオリジナルの回路は容量性負荷に対して非常に弱く、出力ケーブルは5mそこそこしか延せられません。プロフェッショナルなレコーディングでは通常は数十メートル以上離れたところにモニター室をおきますから、この特性は決定的に不都合です。これらの問題を改善したのがこのシステムです。写真を見ての通り、左右別体のマイク本体と、その間にひとつの箱、そして別途電源がひとつという構成です。マイクカプセルはドイツのショップス社製で、用途に合わせて様々なタイプのカプセルを選んで取り付けることができます。通常は無指向性のカプセルを使用しています。これにより左右のマイクが自由にセッティングでき、様々な音源をリニアな音場で捉えることができます。真中の箱にはもともと積層電池が入っていて、マイクカプセルに必要な成極電圧を印可していましたが、2015年の改造時にこれを低雑音高安定DC-DCコンバータに置き換え、マイク用の電源から成極電圧を印可できるようにしました。この改造で音の深みが増しました。この箱はさらに左右のマイクケーブル各々を通じて別々に送られてくる正負2系統の電源電圧を左右のマイク本体に分配する役目も担っています。心臓部の回路も容量性負荷に対する耐性をかなり高め、200m以上マイクケーブルを延ばしても音質劣化を最小限に抑えます。このことは、2系統の電源電圧を2本のマイクケーブルを通じて送れることと相まって、このマイクシステムをホールの三点吊りでも使用可能としています。 2017年の改造では、従来の電源がダイオード整流と一般的なレギュレータで構成されたものであったことと、マイク出力が非平衡の固定出力で使いにくかったことを改善するために、レベル調整機構付き非平衡-平衡変換アンプ内蔵電源装置を新たに開発して置き換えました。電源部分は半導体の接合整流における漏れ電流などの影響を避けるべくn-MOS FETによる同期整流を採用するとともに、最新の金田式プッシュプルレギュレータを組み込みました。これによりマイク自体の音質やリニアリティが改善されました。レベル調整はロータリースイッチに直付する基板を作成してそこに表面実装用チップ抵抗を配置してスイッチングするオリジナルのアッテネータです。配線長が極小で、音質劣化を最少としつつ細かな音量調整が可能となりました。非平衡-平衡変換アンプは電流伝送型マイクのプリアンプの回路を応用したもので、超ローノイズ、広ダイナミックレンジのものです。パーツにも缶入トランジスタや手巻きのフィルムコンデンサなどをおごり、ヒューズにも高音質のものを装填し高音質化を図りました。従来の非平衡固定出力のままの信号も引き出せるようにしていますので、後段の構成に応じて柔軟な対応が可能です。2018年の改造では、マイクカプセルとアンプ初段間の接続方法を変更し、カップリングコンデンサを排除して直結としました。またマイク本体内部の電源フィルターコンデンサをマイカからフィルム(Dynamicap Bare Hot Rod)に変更しました。直接音、間接音の検出能力がさらに向上し、空間表現力が増しました。通常のコンデンサーマイクとマイクアンプでは録りにくいとても小さな音の楽器、複雑な倍音構成を持つ楽器や、ソロやデュオなどの小編成の演奏で精密ながら広がりのある音場再現を期待したい場合には特に威力を発揮します。


レコーディング・モニター・スピーカー

録音セッションの現場へ持ち出しての録音モニター用に自社開発・製作したスピーカーです。Dynaudio製の低音ユニットをベースに、オリジナルGreate Heil Driverを組み合わせ、大型のパーツで作った3次フィルターのネットワークで繋いだ2wayです。音のバランス、音場の左右前後上下への広がりなど録音時に必要な要素を、素直にかつスピード感を持って再生します。

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Waon Recording Monitor 自社開発・2004年製作
ワオンレコードレーベルであれ自費出版であれ、ほとんどの録音セッションはこのスピーカーでモニターしています。Dynaudioの15W75という15cm WooferにESSのGreat Heil DriverというMid-Tweeterを組みあわせた2wayです。47Hzから22kHzあたりまでを再生します。実はこのスピーカーシステム、ワオンレコードの機材の中でダントツ一番重たいのです。そもそもGreat Heil Driverがほぼ全体を磁石が占める超重量級で、アッテネータには大型トランスを用いている上に、15W75の背面には約2kg程のデッドマスを抱かせてあるからです。これらのマスは、決して贅肉ではなく、重量により反作用を抑え、スピーカーの中の可動部だけを忠実に動かすことを狙っています。Great Heil Driverは構造上前後対称に同位相で音が出ます。充分に拡散がある広い空間に設置する場合は忠実な音場を再現するのに寄与するのですが、大抵の録音現場でそうであるように後ろの壁までが近い場合には干渉が出ます。かといって背面を塞いでしまうと1~2.5kHzくらいの特性が暴れます。そこでABS樹脂の厚板に粗毛フェルトの吸音材を貼った衝立を後ろに立てて完全はふさがないで音を止めています。エンクロージャの上に乗っているのがこれまた重量級のクロスオーバーネットワークです。エンクロージャもネットワークもGreat Heil Driverも固定はしておらず、積木のように自由に配置できます。 ただ、15W75とGreat Heil Driverは正相接続していますのでユニットの設置位置がかなり厳格になります(ミリ単位!)。Great Heil Driverが少し前に飛びだしていますが、この位置で15W75と位相がそろいます。逆相接続に比べると音場再現能力ががぜん良くなります。正相接続のためにネットワークには奇数次のフィルターを用います。スピーカーユニットの特性を活かすためにLPF/HPFとも3次のフィルターとしましたので-18dB/octスロープです。クロス周波数はGreat Heil Driverならばこその950Hz。おかげで15W75のインピーダンス補正は必要ありません。ですのでパーツはコイルとコンデンサーが3個ずつです。リッツ線コイルとフィルムコンデンサーで音抜けの良さを狙っています。最近復刻されたものでなくESSのAMT1というフロアスピーカーについていたオリジナルのGreat Heil Driverですので、能率が15W75に対して約16dBも高く、アッテネーションには抵抗でなくトランスを使用しています。Tangoの古いものです。いずれの部品も決して高級パーツではありませんが(そもそも大物は皆中古品)、うまく良いところが引き出されていて、このスピーカーをモニター用としてだけでなく観賞用としても悪くないスピーカーにしてくれています。クラシックやジャズだけでなく、邦楽やJ-POPでもついつい聴き込んでしまう良い感じです。


リファレンス・モニター・スピーカー

編集、マスタリング用に自社開発・製作したモニタースピーカーです。録音セッションでも使えます。ETON製の低音ユニットに、Dynaudioの豪腕ツイータT330Dを組み合わせ、1次フィルターのネットワークで繋いだ2wayです。タイトに音のバランスを保ちつつ輪郭線をくっきりと描き出すタイプです。

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Waon Reference Monitor 自社開発・2004年製作、2020年改造
Waon Recording Monitorと同時開発し、1ヶ月遅れて完成しました。主に編集室での編集とマスタリングに使用しています。録音現場のモニターとしても優れており、スウェーデンのBIS社が神戸松蔭女子学院大学チャペルでバッハ・コレギウム・ジャパンのレコーディングをされる際にご依頼を受けて何度か貸出しもしました。ETONの7-360/37という7インチWooferにDynaudioの名機T330D Tweeterを組みあわせ、リアバスレフのエンクロージャにおさめた2wayです。エンクロージャは板厚を厚く、特にバッフルで厚くとっており(21mm~最厚部39mm MDF製)、スピーカーユニット周辺のマスを大きくするという点で、またバッフルに段差を作って2つのユニットの位相をそろえるという点でもWaon Recording Monitorと同じコンセプトです。ユニットには特に何も細工はしていませんが、吸音材の絶対量を減らすために、ユニットのすぐ後にカーボン繊維を含むフェルト系の吸音シートを取り付けています。その他はオーソドックスな作りです。45Hz程度からフラットなレスポンスがあり、30Hz強までは充分に再生しているようです。全帯域に渡って良いエネルギーバランスを得るためにクロスオーバーネットワークはLPF/HPFとも1次のフィルター、すなわち-6dB/octスロープにしました。モニター用途として考えると通常のTweeterですと帯域外にパワーがかかってつらい構成ですが、T330Dは少々のパワーではびくともしない耐入力があるので心配いりません。クロス周波数は2300Hzと比較的高いので、Wooferのインピーダンス補正回路が入っています。 システムとしての位相特性をフラットにするために、2つのユニットは正相接続しています。ユニットの位置合わせがシビアになるのでバッフルに段差を作っています。プリント基板はESSのAMT1というフロアスピーカーについていた銅箔に厚くハンダメッキされたガラスエポキシ製ものを流用しました。AuriCapフィルムコンデンサーと、AlphaCoreの銅箔空心コイルを使用しています。値段が高いだけのことはあって良い音質です。抵抗はMillsの無誘導巻線抵抗です。結果的に、7-360/37のスピードが速く歪みの少ない低音に、T330Dの剛腕かつ高解像な高音が乗っかって、見通しの極めてよい音調で、聞き取りやすいスピーカーに仕上がっています。どちらのユニットもパワーを突っ込んでも高いリニアリティが保たれるタイプですので、大音量再生でも再現が崩れません。普段編集室では、あまり大きな音でのモニターはしていません。小さな音量で録音のバランスを仕上げるほうが、最終的には高音質につながるようです。

2020年に行った改造では、7-360/37のマグネット部分に1.7kgの鉛のベルトを巻き付けて固定しました。樹脂でベルトの緩み防止をした上で、万一にも外れないようにフレームとタイラップで巻いて固定しています。Waon Recording MonitorのWooferと同様(こちらはベルトでなくブロック)の処理です。いわゆるデッドマスを抱かせたわけです。これは慣性的なアンカーとして作用します。スピーカーの振動板の動きの反作用を受け止め、磁気回路が振動板に与える電磁気的エネルギを無駄なく運動エネルギに変換する助けとなります。7-360/37の振動板はハニカム構造で比較的軽いので、実効質量(振動板が動かす空気の重さも考慮した質量)もさほど大きくはありませんが、それでも前後に相当動きますから、慣性アンカーの作用は重要です。 この状態で元通り組み付けますが、幅広の鉛ベルトで音の反射面積がやや増えているので、ベルト周りに少しだけやはりベルト状にした吸音材を巻きつけました。Wooferからの気流を妨げないように、バッフルとの間には少し隙間をもたせてあります(その後、吸音過多という判断で、この吸音材は撤去しました。2020年10月)。試聴してみると効果抜群で、低音の量感が増しています。もともと早い7-360/37の低音がさらに応答が良くなっていて、T330Dとのつながりがさらにスムーズになりました。中音域の見通しも良くなって、音場の表現も広がりが良くなっているようです。録音機材も編集機材も色々細とかく手を打って来ていて、年々音質が向上してきていますから、その音をモニターするスピーカーも音質向上が必要になっていました。とにかくその目的は達せられたようです。


マイクロ・モニター・スピーカー

出張録音に出た際、調整室や舞台脇でのモニター用に自社開発・製作したニアフィールド・モニタースピーカーです。マスタリングの際に小さなスピーカーでの聞こえ方を確認するのにも使います。Bandor社の5cmフルレンジ一発ですが、解像度が高く、音に対する反応スピードも早い良い音で、モニターとして充分に役に立ちます。

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Waon Micro Monitor 自社開発・2005年製作、2020年改造
録音セッションで使うことはまずありませんが、演奏会の記録録音の依頼などで出張録音に出かけた際、ホールの調整室や舞台脇で使う小さなモニターです。市販のMDF製CDラックをエンクロージャとして流用しています(木目はビニールの壁紙です)。ユニットのフレームとエンクロージャの後壁とを樫の木の棒4本で連結しているので、意外と構造はしっかりしています。ユニットはイギリスのBandor社のBandor-50という5cmのフルレンジです。80Hzから20kHzという再生帯域ですが、アルミの振動板がとても軽いこと、30Wというパワーが入ること、不釣り合いなくらい大きな磁気回路を持つことから、結構立派な音が出ます。最近流行の振動系を重くして小さな箱でも低音が出るようにしたユニットとは全く別世界ですが、軽い振動板に充分な駆動力を与えることがいかに多くの情報量を吐き出すかということを教えてくれます。密閉箱なので少しパワーを入れればダラ下がりながら低域も再現されるので、ニアフィールド・モニターとして充分使えます。エンクロージャ内の吸音は畳んだハンカチほどの量の粗毛フェルトでユニットの背面を覆ってあるだけです。最も空気の振幅の大きいところに吸音材を置くことでその効果が大きく作用しますし、吸音材の絶対量を減らして小さなユニットから出たエネルギーを無駄に吸い取らないようにしています。一方で定在波の影響が出にくいようにエンクロージャの中は音を拡散するような構造にしています(樫の木の棒はこの構造を支える役目も担っています)。結果的に明るい、スピードの早い高解像の高音質になり、仕上がった音源をBGMとして鳴らしてもとても楽しく再生しくれます。

2020年に行った改造では、マグネットの部分に700gの鉛のベルトを巻き付けて固定しました。Waon Recording MonitorのWooferと同様(こちらはベルトでなくブロック)の処理です。いわゆるデッドマスを抱かせたわけです。これは慣性的なアンカーとして作用します。スピーカーの振動板の動きの反作用を受け止め、磁気回路が振動板に与える電磁気的エネルギを無駄なく運動エネルギに変換する助けとなります。Bandor-50の振動板質量はとても小さいですので、700gでもかなりよく効きます。この状態で元通り組み立てて試聴してみますと、まずはローエンドの伸びとタイトさを増した音調が感じられます。さらに聴き込むと音場の広がりや透明感、中高域の応答の速さなども改善されているのがわかります。ちょっとしたプレイバックモニターとして充分に録音の音質評価ができるレベルになったと思います。


バランス・アイソレーション・トランス

電源から侵入してくるノイズを除去し、録音機材にクリーンな電源を送り届ける自社製作の電源コンディショナーです。大きなトライダルトランスを用いた正攻法で、音のエネルギー感を損なわないのが特徴です。

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Balanced Isolation Transformer BIT-15 自社開発・2018年製作
音響機器に供給する電源の質次第で、録音の音質や、再生時の音場の再現などが変化することはよく知られています。もちろん良い音での再生には質の良い電源が必要になります。ワオンレコードでは従来メーカー製のACラインコンディショナーや、レギュレータを組み合わせてクリーンな電源として機器に供給していました。それはそれで確かに良い音だったのですが、改良型金田式DCアンプマイクや電流伝送マイクを使うようになってきますと、もっと音場再現が正確でクリアになるはずだという疑問が湧いてきました。そこで原点に返るという意味で、壁コンセントから直接機器へ供給してみたところ、時間帯などによってはたしかにノイジーではあるのですが、音場再現ということではちゃんと奥行きや上下の広がりが出る上に、引き締まったエネルギッシュな音がするではありませんか。レギュレータを通した場合とよく聴き比べてみますと、レギュレータの方はたしかにノイズは綺麗になくなっているようですが、電源の位相が正相と逆相の間の何処かにあるような感じで、音場の広がりが抑制されているとわかってきました。またコンディショナーと聴き比べてみると、コンディショナーの方はやはりエネルギー感や密度感が損なわれていると感じました。 壁コンセントからの音もよく聴き込むと、時間帯によってノイズの量が変化するだけでなく、エネルギー感も変化しています。おそらく力率が変化しているのでしょう、奥様方が洗濯機を回しているような時間帯になると音が鈍るのです。どう対処するかについて諸先輩方からアドバイスを受けたり実験したりした結果、小細工せずに大きめの絶縁トランスで侵入ノイズをカットすれば良いというところへ行き着きました。ちょうど以前購入していながら使わないまま放置していた絶縁トランスがありました。カナダのPlitron社のカタログ番号なしの1725VAの平衡型絶縁トランスです。試しにバラックを組んで使ってみるとかなり良い結果を得ました。平衡型絶縁トランスによる電源回路は図のように単純なものです。2次側のセンタータップがグランドで、それを中心に上下に合計100Vの振幅が得られます。上下ラインは互いに逆相ですので、外来のノイズが入り込んでも自分自身で打ち消して消えてしまいます。この絶縁トランスは、電源の[非平衡=平衡変換トランス]と考えても良いかもしれません。壁コンの電圧からは50Vシフトしたようになりますので使い方に少し注意が必要にはなります。でも大きな問題ではありません。良い音になることが大切です。 早速持ち出し可能な形で組み立てることになりました。オーディオ・ライターの御田照久氏のレポートでは、絶縁トランスのケースの何処か1面は非金属にするのが良いということでしたので、オープンなトレイに組み付けて、FRPのラックケースに組み込むことにしました。トレイの表面は高周波ノイズの逃し口として銅箔貼りとしました。19インチラック用のトレイに大きな漬物石のようなトランスが乗っかっています。電源プラグはMarincoの医療用、コンセントはLevitonのグランドアイソレート型の医療用としました。ブレーカーの付いていない電源機器はホールの電源に繋がせてもらえないことがありますので、大電流スイッチとブレーカーが組み合わされたドイツE-T-A社のサーキットプロテクタをスイッチとしました。この機器は足元に置くことになりますから、うっかりスイッチを蹴飛ばして電源が落ちてしまわないように、スイッチの前につま先が入らない幅でプロテクトバーを取り付けています。音には関係ありませんが大切です。編集室だけでなく、出張録音に持ち出しても大きな音質改善を実感できています。新しいマイクシステムの良き相棒です。ただただものすごく重たいのだけが玉に瑕。

Balanced Isolation Transformer BIT-5JUS 自社開発・2020年製作
新しく弟分が誕生しました。BIT-5JUSです。BIT-15と同じ考え方に基づくものですが、容量が1/3の500VA、かつ出力電圧が115V(無負荷時123V)のステップアップです。普段は社内の高音質CD-Rコピーロボットの電源として活躍していますが、必要とあれば出張録音の現場へ出て、米国製機器への電源供給にも使えます。トランスは、香港のKeen Ocean製のトロイダル。スイッチやコンセントはBIT-15同様、E-A-TやLevitonのIsolated Groundのものです。ケースはABS樹脂ボディに前後パネルがアルミ製のものを使用、天板裏面には銅箔テープを全面に貼り付けています。BIT-15と同じアイデアですが、天地逆で底面1面が非金属になっています。現場へ持ち出した時に、これの上になにか別の機器を置く場合を想定してのこと。 現場で場所を取らないように横倒しでも使えるよう、側面にもゴム足を取り付けてあります。BIT-15に比べると、容量が小さい分、音のエネルギー感もひと回り小さくはなってしまいますが、ノイズ除去能力は変わらず、高いS/N比が得られます。CD-Rコピーロボットの電源に使うと、最大容量の50%少し超えでの動作になるので、エネルギー感は充分です。お客様に音の良いコピーCD-Rをお届けできるようになりました。  製作中の様子→